二足歩行と同様，キスkissingも進化の産物と考えられます(身も蓋もないですが)。最近の研究によれば，キスを「非攻撃的で，食物を交換することなく口唇と口唇が接触すること」と定義すると，キスはヒトを含む霊長類，ホッキョクグマ，アリ，アホウドリ，イサキ(魚類)，さらにはネアンデルタール人など，動物界で広く共有されている(いた)ことがわかりました。キスには，細菌の交換や相手の健康状態の確認などの目的があるとされていますが，生存のために必要な行動ではありません。むしろ，口と口の接触によって病気をうつされてしまう可能性もあります。それなのに，現在も多くの動物がキスし，ヒトでは個人的，社会的，文化的な意味を有するに至っています。キスは，なかなかに謎めいた行動のようです。

(記：山﨑由美子)


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